Sugarless




<リョーマサイド>









「おっちび♪一緒にか〜えろ!」


いつものように抱きつかれながら、自分よりも大きい存在を支える。


「重いッス…。何でもいいからどいてよ……。」

「俺そんな重くないよ〜!」

「………。」


あんたらの年じゃ軽くても、俺と比較したら重いって言ってんの!

その言葉を呑みながら、着替えを済ます。


「…はぁ、帰りましょ…先輩。」

「おっけ〜!んじゃ皆おっさき〜。」


陽気な声が去ると共に、部室にはいつもの静寂が戻るのだった。
































隣を歩いている英二先輩をふと見上げる

告白されて一週間、特に何も変化は無い

男と付き合うことの意味が解らなくなってきた

先輩は…俺に何を求めてるんだろう?


「おチビ?な〜に、人の顔見て考え込んで。」

「え?…何でもないっす。」


吃驚した…。

自分じゃ一瞬に感じた時間が

思ったよりも長くて…

それも先輩に気付かれるなんて…

英二先輩はとても勘の良い人だから

心が読まれてないか心配だ。


「…おチビ?何か心配事でもあんの?」

「何も…。ないッス…。」


言えるわけないじゃん…

英二先輩と俺が本当に付き合ってるのかなんて…

先輩が俺の体を求めないのは

遊びだからなんじゃないかって…

そんなの恥かしくて訊けるわけがない。


「…そ。俺には言えないのか…。」

「…え?何か言いました?」

「んにゃ、何も言ってないよん♪ほら、此処でしょおチビの家。」


もう家に着いてしまい、心が潰れるように痛くなる

さっき英二先輩が言った言葉が聞けていたら

少しは救われていたかもしれない。


「おチビ?大丈夫???体調でも悪いのかにゃ?」


心配そうに覗き込む先輩が恋しくて

顔を見ているのが何故かとても辛くて

先輩のしっかりした体に抱きついてしまう


「…どしたの?何か言ってくれないと分かんないよ?」


嘘…。

この人は全部解っている。

何で俺が抱きついているのか。

何で俺が哀しそうにしてるのか。

ハッキリとは解らなくても、心の何処かで気付いてる。

もし俺が言葉を出せば

気持ちが全て読まれてしまいそうで

それが恐くて必死にしがみつく


「よしよし、よく分かんないけど…辛いんだにゃ?」


頭を撫でてくれる先輩の手が暖かくて

夢心地な気分になる。


「すいません…。もう、帰りますね。」


先輩の近くに居る事すら息苦しくて

家に向かって走り出す

先輩は追っては来なかったけど

今はそれでいいと思った。


俺の姿を見送った先輩が

ほくそ笑んで居たなんて事は

未だ知る由がない。

俺の間違いは

この人に近づく事から始まった。